YukunP’s diary

古すぎる「定年」のイメージを変えたい! 今の定年は違うんです

定年後再雇用で働くとはどういうことか

定年になって再雇用で働くなら、働く側から見て、定年後再雇用とはどういうことかを事前に十分理解すべきです。

ネットの記事や本は、簡単な説明にしかなっていないと思います。
また、雇う側に立った内容に過ぎないものが多くあります。


1.定年後再雇用の制度とその背景

年金制度を維持するため支給開始をどうしても65歳に引き上げたい、という国の要求が最初にありました。
定年が60歳なのに年金支給開始を65歳にすると、その間の5年間が無収入になります。
その状況で全員に対して「自分で職を探せ」と言うと政治的な大問題になってしまいます。

そこで雇用の義務を企業に押し付け、非正規の契約社員として再雇用し、給料は大幅に下げてもかまわないとしました。
これは同一労働同一賃金とは矛盾しますが、定年後については問題ありません。
なぜなら最高裁の判決で、労働契約法20条の「その他の事情」(退職金をもらっていることなど)にあたるので違法でないとされたからです。

給料の下げ幅は大企業は大きく、中小企業は小さい傾向があります。この結果、多くの人が月給が25万円くらいになっているようです。最低賃金の1.5倍から2倍の間といったところでしょうか。

国は企業に丸投げし何もしない、という批判を避けるため、下げた分を少しだけ補償する雇用継続給付金制度を作りました。

この結果、給料が年300万円、15%の給付金が45万円の計345万円で5年間生活することになりました。

この金額ならほとんどの人にとって年金より多く、夫婦二人ならなんとかやっていけます。

給料がこれ以上高いと給付金をフルにもらえないので、これくらいに抑えられているというのもあるはずです。


2.会社は再雇用社員をどう見ているのか

再雇用社員は、雇用契約書に書かれている通り契約社員です。
嘱託、非プロパーとも呼ばれます。

給料が大きく下がるのはこれが原因のひとつです。

福利厚生が一部なくなることもあります。
いままでは正社員だったので意識していなかった正規と非正規の待遇の違いを、嘱託になってあらためて実感することになります。

待遇が変わるのは仕方がないとあきらめられるかもしれませんが、嘱託になることはそれ以外にも影響があります。

ひとつは情報が遮断されることです。

会議に呼ばれない、情報が知らされない、メーリングリストから外されることで実感します。
すぐにだんだんとわかってきます。

もうひとつは後になってわかることで、期待されるものが違うことです。

正社員とは違い、決まった仕事をこなすことを求められます。
新製品・新サービスの開発、社内改革などは期待されません。むしろそれらに首をつっこんだら拒否されます。それらは若手正社員の仕事だからです。

実態は派遣と同じです。派遣には最初に仕事を教える必要がありますが、再雇用社員にはないので、すぐに使える派遣という位置づけです。


3.職場は再雇用社員をどう見ているのか

会社の見方が変わっても、職場の同僚は今までと同じと見ているはずです。
今までと変わらず働いているからです。

しかし同僚は再雇用社員の変化に気づいてくれません。
給料が下がってモチベーションが下がった、情報が遮断されて仕事ができなくなった、となったら、最近ちゃんとやってくれなくなったと非難するかもしれません。


4.再雇用社員自身はどう思っているのか

自分の置かれた状況が理解できていないまま、納得できず、不満を抱えたまま働いている人が多いようです。

エンゲージメントが非常に下がっている状態です。

歳のせいで体力・気力・集中力・能力が下がったと言われているのかも、モチベーションが下がり働かないおじさんと見られているのかも、と気にし自分のせいにして悩んでしまう人もいるかもしれません。


定年後再雇用の制度の問題点は、

1.再雇用社員のことをよく考えて制度設計されているわけではない

無年金の間、年金程度の給料で働かせているだけの制度です。
仕事は今までと同じことを続けてもらうだけです。
管理職の場合、役職定年後の5年間で安定した仕事ができていないと、あと5年間そのままで仕事をするのは難しいです。

このあたりの問題をよく考えて対応している会社は少ないのではないでしょうか。
現場に丸投げし、現場でなんとかやっているだけになっていると思います。


2.多くの再雇用社員が自分の置かれた状況が理解できていないまま働き続けている

同じ職場でいままでと同じ仕事をしていると、あまり変わっていないと勘違いしてしまいます。おそらくすべての人が勘違いするでしょう。
なぜなら実際、自分から見えるものは定年前後でまったく変わらないからです。

何となく仕事がうまくいかない状況になったとき、自分の年齢による衰えが原因だとしてしまうかもしれません。

あらかじめこのような情報が知らされていれば対処の方法があったかもしれませんが、何が起こっているのかわからず、混乱してしまうかもしれません。

もうやめたほうがいいのかもと思い、でもやめたら無収入になってしまう、転職も厳しそうだとなるとどうしていいかわからなくなります。

環境が激変したのだから、それに適応できるかどうかは100%再雇用社員の責任ではありません。
適応できる人とできない人がいます。
できる人は何とか頑張って続ければいいでしょう。
できない人は自分のせいにせず、やめたほうがいいかもしれません。


定年後再雇用の問題は、本来、国や会社が対策すべきです。
しかし問題が認識されていない現状では対策は期待できません。
今後何かやってくれるとしても時間がかかります。

だから再雇用社員は自分で自分を守るしかありません。

まず現状を認識し、会社や職場にできるだけうまく対応し、その上でいつやめるのか見極めます。
お金の計算、妻との話し合い、やめたあとどうするかを考えておきます。
自分が一番いい形でやめられるよう、やめるタイミングを冷静に判断します。

3年くらい耐えればあとはいつでもやめられる、と考えていれば、意外と5年間粘れるかもしれません。