発達障害グレーゾーンの部下たち(舟木 彩乃 著 2024/11/7)
各章のタイトルは以下です。
第1章 診断名がつかないグレーゾーンの人たち
第2章 発達障害グレーゾーンの主な特徴
第3章 職場での発達障害グレーゾーン
第4章 グレーゾーンとのコミュニケーション
第5章 グレーゾーンをサポートする
第6章 組織としてできること――サポート側の心を守る
職場で問題になるのはASDとADHDだそうです。
おそらくLDなどは学歴や入社の選考ではじかれるからだと思います。
問題の具体例が紹介されています。
1.Bさん 20代男性 理系大学院卒
学会に出した論文で賞を取るほど優秀で、入社後にシステム開発を担当し高い実績を上げたが、プレゼンやコミュニケーションがうまくいかず、自信を失う
⇒ASDの傾向 非言語コミュニケーションが苦手、こだわりが強い、など
2.Cさん 30代女性
商品企画部で斬新なアイデアを出し大ヒット商品を生み出したが、その後役員秘書になると、指示されたことに気を取られ、スケジュール管理などの日々の業務を先延ばしにして注意されることが多くなり自信を失う
⇒ADHDの傾向 興味や関心の度合いによってやる気が変わる、先延ばし、無計画、など
この本で興味深いのは、発達障害グレーゾーンの上司の例が紹介されていることです。
1.Sさん 40代男性
マーケティング部の管理職で、緻密なデータ分析が得意だが、部下からは「こだわりが強い」「冷たい」「パワハラ系」と陰口を言われている マニュアル通りにしないと激昂 部下ができないと思ったら自分でやる
⇒ASDの傾向 空気が読めない、一方的に話す、感情的になりやすい
2.Tさん 50代女性
イベントなどを企画する部署のリーダーで、部署の人間関係は悪くないが、会議中に脱線が多く、自分の都合や気分でスケジュールを変えたり、進行中の仕事を止めて聞いていなかった新しい仕事を持ち込んできたりする
⇒ADHDの傾向 計画性がない
こういう人たちはどこの会社にもたくさんいるのではないでしょうか。
昔なら「職人気質」「マイペース」「不器用」「気が利かない」「頑固」「天然」「変わり者」「偏屈」「要領が悪い」「そそっかしい」などと言われ、それは個人の性格・気質、あるいは努力不足、親のしつけが原因であって、周りからは叱責、諦め、放置、無視されていたと思います。
この本では、それで済ませるのではなく、発達障害の特性を認識してそれに対応する合理的なアプローチが書かれています。
つまり何か問題が起こった時に、
・背景に発達障害グレーゾーンがあり、本人の努力不足とは言い切れないと気づき、
・困りごとのひとつひとつについて周りや人事が組織的にサポートする、
ということで問題を小さくし、解決方法を模索します。
例えば、「第4章 グレーゾーンとのコミュニケーション」では、経理部に提出する書類にミスが多く、期限を守れない、注意しても改善されないという問題についての解決プロセスが示されています。
・まず発達障害かどうかを診断するのではなく、困りごとをなくすようにする
・カウンセリングを行い、一緒に改善策を考える チェックリスト、フォローなど
・その際、フォローのために誰かに負担がかかるような対策は避ける
・上司は上からの指導ではなく、本人の悩みに寄り添うようにする
また、「第5章 グレーゾーンをサポートする」では、よくあるパターン別の指示・指導方法がまとめられています。
1.会議などに開始ぎりぎりにくる、小さな遅刻を繰り返す
⇒ アラームをセットしてもらう、周囲に声掛けをお願いする
2.指示が理解できていない、通じない
⇒ 指示を具体的にし、相手が理解したかを答えてもらう
3.会議などで話が止まらない
⇒ 話す内容をメモで確認する、ストップウォッチで時間を測る、録音する
4.こだわりが強くコミュニケーションに問題がある
⇒ 全体像を示して一つの仕事にかけられる時間を提示し、どの部分にフォーカスして欲しいかを説明する
どのような場面で「怒り」や「恥」の感情に揺さぶられるのかを知ってもらい、思慮深く生産的な対応をするように指導する
5.音などの刺激に敏感な場合
⇒ 面談で職場の環境面での困りごとを聞く 席替えや耳栓の使用を検討する
6.仕事の優先順位がつけられない
⇒ 一日や一週間のはじめに一緒にToDoリストを作り、チェックする
7.仕事のクオリティにムラがある
⇒ できている部分を褒めたうえで、不得意なことはどのようなフォローがあればできそうかを一緒に考える
8.メタメッセージやニュアンスが伝わらない
⇒ 「そのとき相手はどう思ったか想像できますか」などと聞いて、相手の立場になって考える訓練をさせる
おそらくここ10年くらいでこういうアプローチ・考え方が出てきたのだと思います。
これからの職場はこのように対応をする方向になっていくのかもしれません。