YukunP’s diary

古すぎる「定年」のイメージを変えたい! 今の定年は違うんです

「60歳でもう働かない」というのはファンタジーです

SPA!の2022年8月16日・23日合併号に「今から備える60歳でもう働かない技術」という特集記事があります。「再雇用されずに「お金に困らない老後」を過ごす!」ともあります。

記事の対象は50代です。50代は、再雇用で働きたくない、でも生活のために少しのバイトなら働くのは仕方がない、と考えているようです。

写真の男性たちはスーツを着ていて60代、70代に見えます。こうはなりたくないという意味を込めているのでしょう。


記事ではどうやってそれを実現するかをステップに分けて説明しているのですが、かなり非現実的です。

ステップ1 老後資金を確保する
・退職金と貯金の中央値は、それぞれ1152万円、875万円、合わせて2027万円
・普通の生活の支出は27.1万円、年金の平均が24.8万円なので、2.3万円の赤字
・その結果、85歳時点で1220万円足りなくなる

この対策として、50歳から毎月5万円を積み立てNISAで運用することをすすめています。
eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)を55%、楽天インデックスバランスファンド 債券重視型を45%の比率で4.7%の利率で運用し、65歳まで続ければ1265万円になり不足分をカバーできるという目論見です。

しかしこの毎月5万円は貯金の875万円とは別に用意しなければならず、しかも60歳からは収入がないので、完全に無理です。

晩婚化で普通は50歳では子供は自立していません。50代は収入が多いですが子供の学費が一番かかる時期なので貯金どころか減るのが普通です。

また、病気、介護、リフォームに備えて500万円から1000万円程度キープすべきです。
さらに、85歳に近づくにつれ、貯金がゼロになっていく状況を避けるべきだし、85歳を超えて長生きした場合に備えて、貯金の取り崩しがない状態にすべきです。

こう考えると貯金の取り崩しを前提とした生活設計は避けるべきです。
よほど資産がある人を除いて60代前半は働かざるを得ないはずです。


残りのステップも同様に、定年から年金支給開始までの5年間の生活資金をひねり出すには全く足りないと思います。

ステップ2 老後の仕事を考える
 時給1100円~1200円の仕事を紹介
ステップ3 安く暮らせる地方を検討
 東京と比べて家賃は半額以下で物価も4%ほど安い
ステップ4 体を鍛えておく
ステップ5 新たな居場所を求めて


こういう特集の多くは、FPに聞いて、厚生労働省金融庁が発表している平均的な数字を元に都合よく計算しているだけです。
こうすればできるかもしれないという内容なら「技術」とはいえないし、非現実的なら意味がありません。

老後の生活を詳細にシミュレーションできておらず、老いたときの状況、心理を想像できていないと思います。

定年に近づくと、資産額、年金額が確定してきます。その数字を見て老後の生活の厳しさを知り、60歳でのリタイアなど夢のまた夢であることを理解することになるのだと思います。