俺たちの定年後 - 成毛流60歳からの生き方指南 - 2018/11/8
成毛氏は1955年生まれで2020年に定年になった人より5歳上の少し先輩です。世代としてはだいたい同じです。
彼は日本マイクロソフトの社長だったのでおそらくストックオプションがかなりあってお金に困らないはずです。40代からリタイア生活をしているリタイア生活の大先輩になります。
だからこの本は、お金が十分あって働かなくてもいい人がリタイア生活をどう過ごせばいいかを考えるときに大いに参考となると思います。
成毛氏はこの中で他の定年本にはない独特の主張をしています。
まず、仕事をするなということです。
「新しい人生を歩み出せ」「やりたいことをやれ」「わがままに生きろ」(第1章)
「仕事のための生活習慣はすべて捨てろ」(第2章)
「学生という身分を卒業し、社会人になったときには、それまでの習慣や言葉使い、服装や住まい、そして何より、気持ちを切り替えたはずだ。それと同等の大転換が、定年にあたっては欠かせない」(第2章)
「会社員時代の思考パターン(評価主義、スピード主義、ビジネス書に書かれているようなこと)は破壊せよ」(第2章)
つぎに遊べということです。
理想的な例としては、パイロットを定年退職してバーを開業しマスターになる、妻の趣味をまねして作品をつくったことをきっかけとして個展を開くような作家になる、を挙げています。(第1章)
「わがままになるには、子供に戻れ」(第1章)
第2章の途中から最後まで、どう遊ぶか、どう生活するかという例が示されています。
街歩き、テレビ、動画配信、映画、ドライブ、スマホアプリ、カメラ、プラモデル作成、美術館、博物館、ゴルフ、観劇、ゲーム、旅行などです。
そして定年後に始めたほうがいいと世の中で言われていることに対して、疑問を提起しています。(第4章)
コミュニティに入る ⇒ 人づきあいが好きでないならしなくていい
町内会の活動 ⇒ 善意のある人の正義と正義の戦いに巻き込まれるから距離をおく
ボランティアサークル、NPO、NGOに参加する ⇒ 町内会の活動と同じ
新しい仕事をする ⇒ 自分に向いていない仕事はストレスがたまる 特に接客業
起業 ⇒ かなりの時間と体力が必要だから絶対におすすめできない
農業 ⇒ 体力と継続が必要で休めないから絶対におすすめできない
ペットを飼う ⇒ 旅行に行きにくくなる(第6章)
つまりいやなことはやらない、自分を縛るものには手を出してはいけないということです。
ただし、こういう生き方は社会からは歓迎されないかもしれません。
世の中(特に企業と企業から広告をもらっているメディア)は、給料の安い仕事をたくさんして欲しいと望んでいます。
国(厚生労働省)は、地域で介護の仕事やボランティアをして欲しいと望んでいます。
シニアには地に足をつけて社会を支えて欲しいということです。
成毛氏が勧める生き方はそういう願いを拒否しています。おそらく大っぴらに拒否する最初の世代だと思います。