週刊東洋経済2021年12月11日号の特集「定年格差」でちょっと面白いと思ったのが、
「逃げ遅れた人、逃げ切れた人 第二の人生でついた明暗 定年後もさまざま。悠々自適の人もいれば、思い通りにいかない人も。」というタイトルの記事です。
これは65歳でリタイアしたばかりの人と、74歳の団塊世代の人の境遇を比較しています。
2つの世代の格差をうまく描写していると思います。
■65歳でリタイアしたばかりの人
年金は、60歳ではもらえず、62歳から報酬比例部分だけもらっています。
仕事は、60歳で定年退職、その後同じ部署でシニア管理職(契約社員)として62歳まで在籍、地方にUターンして地元企業に管理職として再就職して65歳でリタイアです。
年金を一部もらえるまではどうしても再雇用で働かざるを得ないというのはよくわかります。
年金を一部でももらえると、再就職で給料が下がっても(最低賃金レベルでも)容認できるため、Uターンが実現します。足りない部分だけを稼ぎ、年金がフルに出るようになってやっとリタイアできます。
■74歳の団塊の世代の人
年金は、60歳から報酬比例部分、64歳から全額をもらっています。月収50万ということなので、その内訳は厚生年金が25万、企業年金が25万といったところでしょうか。
企業年金の運用利率がおそらく5%超なので自分で運用するのではなく、会社に運用してもらって年金でもらうほうが楽でお得です。
仕事は、マンションのフロント業務を契約社員として1年3か月だけ働いてリタイアです。その後は年50~60日旅行です。
64歳までは定額部分がなく、年収は80万くらい減って520万くらいになります。そうだとしても、これなら60歳以降働く必要はありません。
2つの世代の格差の原因は4つです。
1. 年金の支給開始時期
2. 厚生年金の額
3. 退職金(一時金と年金)の額
4. 企業年金の運用利率
特に大きいのが1と4です。
今の定年世代は定年後に年金がなく、生活のためにまとまった金額を稼ぐ必要があります。選択肢がほとんどないので必死に働かざるを得ません。
団塊の世代は60歳から報酬比例部分の年金をもらっています。
団塊の世代が優雅に生活できるのは主に4の運用利率が5%以上と高いことが理由です。
今の定年世代はそれが2%くらいでうまみがなく、退職金額の減少もあって一括でもらうようになって企業年金の額が急減しています。
社会問題にならないのが不思議なくらいです。