YouTubeチャンネル「アバタロー」より
【名著】老年について|キケロ 後悔なく、美しく、老いていく
多くの人は長生きすることを願っている。しかしいざ老いてみると、たいていの人は老化した自分に失望したり、文句を言ったりするものだ。
だがこういった老人の不平不満の原因は、年齢によるものではなく、本人の性格の問題である。
きちんと道理をわきまえている老人は上手に年を取り、いつまでも穏やかで、人生を楽しんでいるものなのだ。
キケロは老いが悲観される4つの理由を説明し、それぞれが悲観するものではないとしています。
(1) 活動性の低下
体力を使う活動ができなくなるなら、精神の力の活動をすべきである。老いたとしても知性は保たれる。記憶の力が衰えることもあるだろうが、鍛錬で補えばよい。
(2) 体力の減少
自分のできる範囲で力を発揮すればいい。老いは成熟していることであり、それは若者にはないメリットである。健康に特に気を付け、手入れを欠かしてはいけない。
(3) 快楽の欠如
快楽とは、「災いがもたらされる最大の悪の餌」である。
人を過ちに駆り立てる欲望を老年が取り去ってくれる。
(4) 迫りくる死
死ぬのは老人だけではない。老人は長く生きるという希望をすでに実現したのである。
老いることは自然なことであり不幸ではない。
老人は、すでにたくさんのものを持っています。
あまり働かなくてもよく、多くの時間があります。
誘惑に負けない方法を身に着けているので、時間を浪費することがありません。
また、知識や経験といった資産があります。有り余る時間を使ってこれをさらに大幅に積み上げることができます。
一方、老化のデメリットは体力の減少と健康不安だけです。
したがって持つべき心構えとは、知識や経験を積み上げるために怠惰であってはならず、情熱をもって学び続けることであり、健康に気を付け、メンテを欠かさないということになります。
人は右肩下がりだと絶望し、右肩上がりだと希望を持つものです。
右肩上がりのものをできるだけ多く積み上げ、右肩下がりのものはその減少を最小限にすることによりトータルでプラスにすることができれば、老いても希望を持てるということです。