YukunP’s diary

古すぎる「定年」のイメージを変えたい! 今の定年は違うんです

がん放置理論を信じ、標準医療を否定するのは、将来のリスクに考えが及ばないから

参照点 がん放置理論がなぜ受け入れられるのか?(平井啓 医学書院)

フレーミング効果とは,同じ現象のポジティブな側面(ポジティブフレーム)とネガティブな側面(ネガティブフレーム)のどちらに焦点を当てるかで,意思決定が変化することをいいます。

例えば患者に同じ成功率の治療を受けてもらうときに「治療を受ければ600人中200人が助かります」と表現するのがポジティブフレームで,「治療を受けても600人中400人は助かりません」がネガティブフレームです。

 

ポジティブフレームの場合

医師の適切な説明により、「このままではがんが進行してしまう」という視点になれば、「術前化学療法を行い、手術をする」という説明は患者にポジティブに受け止められます。
そして、治療により余命の延長や予後の改善が得られる「利得状況」として認識できると、人は病状が悪化するというリスクを避け、「治療を受ける」という意思決定をしやすくなります。

ネガティブフレームの場合

一方、家族や友人ががん治療に苦しんだ経験があったり、がん治療を受けていた芸能人が亡くなったニュースを直近で見ていたりする場合、治療に対する恐怖心が高まり、医師の説明はネガティブに受け止められます。
そして、「今の生活を維持したい(現状維持)」という考えのまま、治療することが苦しみや死という多大な損失がもたらされる「損失状況」として認識されます。
治療を受けずに病状が悪化するというリスクを負ってでも、「現状維持の可能性がある他の選択肢」を選ぶ可能性が高くなるのです。

いわゆる「がん放置理論」は、このネガティブフレームをそっくりそのまま利用しています。がん治療やそれを勧める医師に対する恐怖をあおり、がんの進行を防ぐという視点に移動することを阻害します。

そして、説明をポジティブフレームとして理解できず、ネガティブフレームとして受け入れるようになります。何もしないことに正当性を与え、治療を受ける意思決定を妨げるのです。

(読みやすくするため少し変更しています)


がん治療の選択は、将来のリスクを考えて今どういう治療をするかということが重要になるはずです。

しかし間違った情報、治療と合併症に対する恐怖心を煽る情報、医師・医学に対するネガティブな情報が与えられて、それを信じてしまうと、未来を考えるよりも、目先の治療のデメリットばかりを考えるようになります。

「合併症がつらく、精神を病んでしまい、自殺した人もいる」
「医者は手術数を稼ぎたい裏事情があり、本当はする必要のない手術を勧めている」

その結果、できるだけ現状維持に近い治療法、民間療法、さらには全く治療しない、免疫力を上げる食品、運動を選択することになります。


これで、がん放置理論のようなおかしな理屈をどうしてたくさんの人が信じているかがわかりました。


Amazonにあるがん治療の本を見ると、2種類あることがわかります。
・医師が標準医療とその周辺を説明するもの
・ジャーナリストや専門外の医師が標準医療を否定するもの

それぞれの本がどちらの視点で書かれているかをよく見極め、情報収集することが重要だと思います。