YukunP’s diary

古すぎる「定年」のイメージを変えたい! 今の定年は違うんです

伊能忠敬は間違って断片的に評価されていると思う

伊能忠敬は事業家として成功した後、49歳でリタイア、50歳で測量学を学び始め、55歳から71歳まで全国を測量して日本地図を作るという偉業を成し遂げた人です。

老後の生き方について調べていると、第二の人生は伊能忠敬のように生きるべきだ、という記事をよく目にします。

伊能忠敬のように生きるべき」というなら、

・いったんリタイアする
・十分な資金がある
・余った力とお金で現役時代やっていた仕事とは全く違うことを自費でやる
・それが本当にやりたいことである
・そして偉業を成し遂げる

といった条件が必要です。

しかし、世の中の伊能忠敬の評価を見ると、これらの一部だけ切り取り、都合よく利用して自分の主張を展開しており、その結果間違って評価してしまっていると思います。

例えば、

間違いその1 第二の人生に成功した

なぜ伊能忠敬はすごいのか?「中高年の希望の星」にとどまらない人生に学ぶ成功法則(FinTech Journal)

【次ページ】忠敬に学ぶ、第二の人生の成功のポイントとは

伊能忠敬は成功しようと思っていたのではなく、本当にやりたいことをやっただけだと思います。

もともとは地球の大きさを測りたかったようで、そのためには北海道まで行ってそこまでの正確な距離を測ることが必要であり、そこで北海道までの地図を作るという名目が必要でした。
結果的に日本地図を完成させたわけですが、はじめから日本全図を作るという目標を設定して実行したということではないようです。

伊能忠敬を例に挙げて、第二の人生に成功しようと主張するのは的外れではないでしょうか。


間違いその2 伊能忠敬は遅咲きの象徴である

遅咲きの人 伊能忠敬的生き方(東京新聞)

「あきらめず人生幸せ」「長寿いつでも咲ける」「主婦から80歳で起業」

日本地図を作ったのは現役時代の延長ではありません。いったんリタイアし、リタイア後に本当にやりたいことをやっています。何かやってみようとたまたま思いついたことをやったわけでもありません。

伊能忠敬を例に挙げて、現役時代にやっていたことを高齢になっても続けていればいずれ花開く、といった主張するのは的外れではないでしょうか。


間違いその3 新しいことへの挑戦に年齢は関係ない

伊能忠敬とは? 生涯や成し遂げたことをご紹介。距離はどのように測量していた?(ベネッセ教育情報)

伊能忠敬の生涯を通じて学べることは、新しいことへの挑戦に年齢は関係ないということ。

これは近いかもしれませんがちょっと違うと思います。
伊能忠敬は暦学(太陽・月・暦の運行を観測して、暦を作る学問)や天文学をずっと勉強しており、その延長で測量学を学びました。
家業が忙しくてできなかった本当にやりたかったことを、リタイア後に本格的にやったということです。


間違いその4 リスキリングをした

江戸時代の「リスキリング」 展示をもとに見てみると(NHK)

「学び直し」という意味の「リスキリング」~江戸時代で言えば、49歳で隠居したあと天文学を学び、全国を歩いて測量した伊能忠敬が知られています

リスキリングというのは、世の中に求められる職種に合わせてスキルを得ることであり、職を得るためにやることであって、自分のやりたいことではありません。
伊能忠敬は本当にやりたいことをやるために、必要だったから勉強をしたのです。職を得るためではありません。

伊能忠敬を例に挙げて、高齢になってもリスキリングすべきだと主張するのは、的外れではないでしょうか。


伊能忠敬のような人は、その後日本に現れていないのではないかと思います。

海外では、戦艦武蔵を発見したマイクロソフトの創業者の一人ポール・アレン氏が思いつきます。彼は条件が揃っています。

・いったんリタイアする ⇒ マイクロソフトをやめる
・十分な資金がある ⇒ ストックオプションなどで莫大な資産がある
・余った力とお金でいままでやってきたことと全く違うことを自費でやる
・それが本当にやりたいことである ⇒ 戦没軍艦の調査など
・そして偉業を成し遂げる ⇒ 戦艦武蔵の発見


伊能忠敬のような生き方」とは、現役時代にできるだけたくさん資産を作り、できるだけ早くリタイアし、そのあと自分のお金を使って本当にやりたいことをやるということだと思います。

そうすれば、偉業の達成は難しいとしても何かを生み出せるかもしれません。