YouTubeチャンネル「アバタロー」より
【超大作】自由からの逃走 | フロム ~絶対に知っておきたい「自由な生き方」の副作用~
「この動画のご視聴にあたって特に難しい知識は要りません、手ぶらでOKです」と言っていますが、学校で勉強した世界史(ヨーロッパ史)の知識は必要です。
この本は3つのテーマからなります。
1.権威に服従したがる人間
ヨーロッパの人達は自由を獲得するために、時には命をかけて戦ってきました。
ところがそこまでして獲得した自由を自ら手放した国があります。まずイタリア、そしてドイツです。
人間は「自由」を欲しがる欲望がある一方で、実は「服従」を求める欲望もあるのではないか。とフロムは考えました。
2.重すぎる自由の代償
フロムの考察は中世ヨーロッパに遡ります。
中世社会では個人的な自由はなかったけれども、社会とのつながりがあったので不安感も孤独感もそれほどなかった。ところが中世の末期になると、社会基盤であった封建制度が崩壊していき、人々は社会とのつながりを失った。そのきっかけを作ったイタリアではもっと個人を開放しよう、もっと人間中心の文化を作ろうと盛り上がり、ルネサンスが花開いた。ところが盛り上がっていたのはお金持ちばかりで、社会から切り離された下層中産階級の人々は、より不安と孤独を募らせるようになった。
そんな中、ルターとカルバンが現れ、宗教改革が始まった。徹底的な自己否定と絶対的な神への服従を説く彼らの教えは、プロテスタントという新たなキリスト教分派を生み出した。そしてプロテスタントたちの仕事に対する熱い使命感、まじめで禁欲的な態度が、やがて近代資本主義の発展につながった。
資本主義は自由に耐えられる強い個人を作り出したというすばらしい面もあった。けれどもこれまで以上に孤独感、無力感を人々に与えた。また、人々が何の疑問も持たず、巨大な経済的機械の歯車になった背景には、宗教改革のときに生まれたプロテスタント信仰がある。つまり当時のルターやカルバンの教えを信じたことで、服従しやすいマインドが身についてしまった。
当時の人はどうやって自分たちの無力感や孤独感を癒そうとしていたのか。それは財産・名声・権力である。これらが孤独な資本家たちの心の唯一の支えになっていた。一方それらを持たない大多数の人は家族を持ち、妻や子供を従え、その中で威厳を保つことで自分を安心させていた。ただ、今挙げた手段はその場しのぎの精神安定剤であって、不安や孤独を根本から取り除く手段ではない。
さらに近代から現代へと時代が進んでいく中で社会は発展し、人々はより個人的な自由を享受できるようになっていった。しかしその流れが人々にさらなる孤独感や無力感を与えることになったのは言うまでもない。そして自由の重荷に耐えられなくなった人間たちは、ついに自由からの逃走をはじめるのだ。
3.逃げたくなる3つの心理
自由の重荷に耐えられなくなった人々はどのように逃げるのか
権威主義:自分の欠けている部分を何かに依存して補おうとする心理。これには神のような「権威ある人」にすがりたくなるパターンと、他人を支配したり、操ったりして自ら権威者になりたがるパターンの2つがある。
破壊性:自分と比較する対象となる友人などを破壊する、あるいは自分自身を破壊する。
機械的画一性:自分の意思や感情を無視し完全に他人に合わせる。
これらはナチスを思い浮かべると理解できると思います。ナチスに従いたい、ナチスで活動したい、ユダヤ人を迫害したい、みんなとナチスを支持したいということでしょうか。
ドイツ人はなぜ自らナチスを支持したのか、ずっと疑問だったのですが、これでわかったような気がします。
フロムはこの状況を克服するためのヒントを提示しています。
・自発的な活動によって自分と世界とを結びつける
・愛すること 愛は能動的な活動である
これにより自由の重荷から解放され、自らを救うことができるということです。
第二次世界大戦の頃のヨーロッパの状況を背景にした著作ですが、そのまま現在の日本にも当てはまるような気がします。